I'm wearing....で止められると……
”Tony” こと「とにかく明るい安村」さんが、イギリスで再び大ウケしましたね。1回目に出演したときは、審査員たちが "Pants!" と応じてお客さんのように大盛り上がりする姿も話題になりました。「日本だったら中立の立場の審査員が芸に参加することはあり得ないけれど、イギリスでは一緒になって楽しむんですね」といった受け止められ方だったようです。
英語の観点から一つ説明を加えます。"wear" は他動詞なので、目的語にあたる「何を(身につけているのか)」(ここでは "pants")を伴わずに使うことは通常ありません。
”Don't worry. I'm wearing....”
で止められてしまうと、文章が途中で切れたようになって、聴いている人は自動的に「何を?」の部分を待ってしまうのです。日本語で例えば、「私の名前は……」で止められると、先が気になってしまうのと同じです。イギリスのお客さんや審査員は "Paaaaants!" と補いたくなるのです。
他動詞の使い方は日本人には意外に難しく、昔の生徒さんにも英作文をすると他動詞の目的語を抜いてしまう傾向のある人がいました。”He is very kind, so I like.” で止めてしまい、"him" を書かない。安村さんが "wearing" で止めるのは盛り上がりますが、入試で目的語を抜くと減点されてしまうので、意識して直してもらいました。もともと優秀な方でしたが、しつこく直しているうちに英語と日本語の違いを理解するに至ったようです。医学部に進学され、今はお医者さんです。