受験生は「自分本位」を貫いていい

 とある模試で生徒さんが、受験科目である理科1科目を学校からの「お願い」で受けさせてもらえないということが、実際にありました。とても優秀で志の高い生徒さんで、今までの勉強の成果や各教科のバランス、そして志望校合格可能性を確認したかったのです。しかし、理科2科目必要なところを1科目しか受験させてもらえなかったので、ほぼ全ての受験予定校の判定が出ませんでした。

 学校を通さずに自分で申し込めればよかったのですが、県内には会場がないという事情があり、それができませんでした。

 なぜ学校がその方に理科1科目の受験をさせなかったかというと、なんと、「データ」のためだというのです。理科は化学・物理・生物・地学の4つがありますが、前3科目の受験生が圧倒的に多く、この生徒さんの得意とする地学はとてもマイナーです。(地震大国である日本にとって、地学研究者を育てることは非常に重要なことであり、この現状自体が問題ではあるのですが、それは今は置いておきます。)

 学校側がどういうデータを取りたいのか、なぜマイナー科目を受験する人がいると支障があるのか、私にはさっぱりわかりませんが、生徒本位でないことだけは明らかです。一人ひとりの生徒は大学受験という、人生の中でそこそこ大きな、現時点では最大かもしれない、イベントに臨むべく、一生懸命勉強しているわけです。学校が集めるデータのために模試を受けているのではありません。何のためのデータなのか? 学校が生徒の妨害をするなど、本末転倒もよいところです。

 しかも、「禁止」できる理由がないので、「お願い」して辞退させるやり口も卑怯そのもの。理不尽な目にも遭ってもはやオバサンとなった今の私なら拒否できますが、高校時代には私でもとても「先生のお願い」を断れなかっただろうと思います。

 その学校はいわゆる進学校ですから、合格実績は欲しいのです。それなのに、生徒の努力の邪魔をする。自分で矛盾を感じないのだろうかと疑います。

 これほどひどくなくても、必要のない生徒に共通テストを受けさせたり(当日熱を出しちゃえばいいんです!)、行く気のない大学を受けさせよう(「お金がないので先生が受験料を出してください」と言ってみましょう!)とする学校は多いことでしょう。高校生の皆さん。受験は自分のためで遭って、他の誰のためのものでもありません。自分本位を貫いていいのですよ。