「やさしい先生」と「きびしい先生」

 大規模な家庭教師センターや個別指導塾では、「やさしい先生希望」とか「きびしくグイグイ引っ張ってくれる先生希望」という生徒側からの要望をもとに講師を探すことがあるようです。私も昔あるところで面談を受けた際にどちらのタイプかを訊かれ、返答に窮したことがあります。なぜなら生徒によって、あるいは同じ生徒でも時と場合によって優しくも厳しくも対応を変えられるのがプロだと思っているからです。

 「やさしい先生」と「きびしい先生」というのは存在するのでしょうか? 一生懸命宿題に取り組み、わからないことを熱心に聞いてくる生徒に対して、「なんでこんなこともわからないんだ!」などと言う人はいないでしょう。もしいたら、それは「きびしい」のではなく、講師失格です。(講師以前に人としてどうかと思います。)

 逆に、目標だけはとても高いのに、宿題はやらず、授業ではぼーっとして1分前に説明したことも覚えていない(聞いていない)生徒に対して、きびしくならない人はいないでしょう。そんな状態でも「今日も授業に来てえらいね〜」などと言う人がいたら、それは「やさしい」のではなく、生徒同様に熱意がないのです。諦めているのです。

 「ほめて伸ばす」というフレーズがよく聞かれますが、それは何でもかんでも、褒めるに値しないことまで褒めるという意味ではありません。良いところや頑張って達成したことをきちんと評価して伝えるという意味です。そしてそれは「やさしい」か「きびしい」かとは関係ありません。