紙辞書の勧め〜電子辞書を使うにも実力がいる〜

 今の中高生・浪人生は初めから電子辞書を使っているのが普通ですが、授業中に調べる必要があって辞書を弾く様子を見ていると、うまく使えている人がびっくりするほど少ないです。単語の用法や、簡単なイディオムを調べるにも、ずいぶん時間をかけてポチポチとキーボードを叩いてあれこれやっているのですが、適切なところにたどり着かないのです。成句検索の存在や使い方を知らない人もたくさんいます。

 電子辞書は、綴りが途中までしかわからなくても候補を示してくれたり、発音記号が読めなくても発音してくれたり、複数の辞書を横断して見られたりと、紙ではできないとても便利な機能を備えているのですが、高機能であればあるほど、使う側にも技能が要る文明の利器の典型例です。私がスマホを使いこなせないのと同じことです。😅

 では、どうしたら便利な電子辞書を使いこなす力をつけてゆけるのでしょうか。古いことを言うと呆れられるかもしれませんが、紙辞書を使うことです。学び始めや、英語が苦手だという人ほど、紙の辞書を使うべきだと思います。それも実力に合わせた易しいものから始めるのです。中学一年生(今なら小学5年生)がゼロから英語を始めるときに使いやすい辞書と、ある程度の基礎を身につけて大学を目指そうという高校生が使うべき辞書は違います。後者が不自由なく使えるようになれば、電子辞書も使いこなせる可能性が高くなります。

 ある浪人生は、長文の中に出てきた「in time (to V)」という言葉を、電子辞書を何回も何分もかけて引いたのに、単語や成句ではなく、なぜか例文検索をしていて一文しか見つけられず、訳のヴァリエーションも不定詞や for が続く用法もわからないままでした。紙の辞書なら、とにかく「time」を引いて指でたどっていけば必ず見つかります。ずっと簡単です。その過程で、辞書の表記や、そもそも単語には複数の意味や用法があること、イディオムの存在などに気づき、慣れてゆくのです。

 「電子辞書を引いても結局よくわからなかった」という経験が多い人には、紙辞書を使ってみることを強くお勧めします。簡単な上に、進歩できるからです。