ドリトル先生がつなぐ英語と世界史
講師の知識が生徒に影響する
英語の長文問題集は収録している文章の出典を載せていないことも多く、内容に興味を持っても元の作品を(翻訳でも)探して全体を楽しむことができないのは残念なことです。それでも読書好きの講師なら元の作品がわかって、教科をまたぐ説明によって生徒にさまざまな知識をつける手助けができることがあります。
英文だけなら大学生家庭教師でも説明できるけれど…
ある時、大学生の先生にも英語を見てもらっていた生徒さんが、「こないだ変な長文があって、小説みたいなんですけど、英語としてはわかるけどお話がよくわからないよねって先生とも話してたんです。お医者さんなのに人間の患者が嫌いで、名前も変でドーリトルだかドゥーリトルだか……」とひょんなキッカケから話してくれました。私は子供の頃、一作目だけ読んでいたのですぐに想像がつき、『ドリトル先生』シリーズの説明をしてあげることができました。名前の "Dolittle" にも英文法の重要項目が入っていますね。「ほとんど何もしない先生」(ヤブ医者?)です。
その生徒さんは難関国立文系志望で世界史も選択していたため、『ドリトル先生』が書かれた背景には第一次世界大戦の深い傷があること、またシリーズの中には『ドリトル先生アフリカへ行く』がありますが、舞台となっている19世紀ヴィクトリア朝のアフリカといえば半分くらいはイギリスの植民地にされていたことなど、重要な世界史の項目とつなげることができました。
長文が物語の場合はイギリスやアメリカの児童文学作品が採録されていることが多く、同じ生徒さんの授業で、他にも『小公女』や『秘密の花園』で有名なバーネット夫人の『小公子』の冒頭が出題されていたこともありました。この時もまたイギリス児童文学と日本への導入の歴史や世界史とつなげて興味を持ってもらうことができたのは、私としても教え甲斐のあることでした。