ノーベル賞からクロワッサンへ②
前回の続きです。
さて、国際赤十字は世界中どこでも、宗教や民族とは無関係に救護活動をしますが、Red Cross の「cross」も、マークの十字も、もちろんキリストの十字架を表しています。
「イスラム圏でこのマークつけてたらどうなると思う? 十字軍みたいじゃない?」
こう聞いてみると生徒さんはハッとして考え込みました。
そこで、赤十字がイスラム圏では名前とマークを変えて、赤新月社(マークは白地に赤い三日月)として活動していることを説明しました。英名は「Red Crescent」です。この「三日月=crescent」という単語はそこそこ大切な単語で、世界史の授業の1時間目に習う四大文明のうち、メソポタミアの「肥沃な三日月地帯」(今のイラクですから、まさにイスラム圏でもありますね。)は、「Fertile Crescent」です。ここで、「fertile」や「fertility」という重要語も紹介します。
太陰暦を用いているイスラム圏では三日月は始まりを意味するシンボルで、多くの国の国旗にも三日月デザインを見ることができます。ここで、スイスに続いてトルコなどの国旗も見てもらいます。
十字がキリスト教の象徴なら、三日月はイスラム教の象徴という意味合いを帯びるのです。さてここで生徒さんが文系の受験生なら、第二次ウィーン包囲について思い出してもらいます。オスマン=トルコによる包囲をキリスト教国側がなんとか突破して勝利したという出来事です。
「トルコに勝った!」→「三日月食っちまえ!」というわけで、作って食べたのがクロワッサンの始まりです。「croissant」 という単語自体が「三日月」を表すフランス語ですが、発祥はウィーンなのですね。ちなみにそのまま英語にもなっているので、英語でもクロワッサンは croissant です。最近は真っすぐな形のクロワッサンもよく見かけますが、両端が同じ方向にくるんと曲がったものをイメージしてくださいね。(食べたくなってきたな😋)
ついでに、音楽用語の「クレッシェンド」(crescendo)もcrescent と綴が似ているのがわかりますか? 同じ語源です。三日月はだんだん太っていきます。「クレッシェンド」もだんだん大きくすることを意味します。
このように、ちょっとつまらない長文から、関連するさまざまなことを紹介して、英単語も知識も身につけてもらい、少しでも頭を使ったり刺激を受けてもらえるような授業を常に目指しています。ノーベル賞から広がるお話はまだまだ続きます。😊