急がば回れ、英語は辞書を使え

 ここ数年で生徒の机から消えたものがあります。辞書です。紙辞書はとっくに全滅していますから(私のうちでは生き延びています)もっぱら電子辞書ですが、その電子辞書すらも見当たらない。「辞書を持ってきて」という前に、「辞書は持っている?」と確認するのが普通になりました。すると、「実家にあるはず」(by下宿生)とか「どこかにあるかも」とか答えるのですね。中学入学のお祝いなどで買ってもらって、電池切れなどをきっかけに使わなくなり、そのまま行方不明になるようです。(探してあげて〜!)ざっと調べるだけならスマホの検索や単語帳で済ませられるので、必要を感じないのでしょう。

 辞書のような一見非効率的なめんどくさいものは、教師に散々言われたり、課題をこなす必要に迫られて嫌々使い続けているうちに、その有用性が染み込んできて、それなしでは勉強できないほどの道具だと気づくわけですが、最近は学校でも昔のように「辞書をひけ」とは言わないらしいのです。

 背景として、文法や和訳の軽視と速読の重視(といっても、共通テストのような中身の薄い文章を斜め読みするだけ)があるように思います。一方で、大型の自由英作文など、英語で表現することも重視されるようになってきていますが、英作文の勉強が英和・和英の両辞書なしで成立するものでしょうか。生徒たちを見ていると、「成立させちゃっている」ようです。つまり、現時点で知っている単語と表現だけを使って簡単に書くのです。したがって、レベルにもよりますが同じ単語や似たような文章の反復が非常に多い。反復は英語という言語が嫌うものです。本番の試験では、その時点で確実に使える知識を使ってできるだけミスをしないように書きますが、練習の時点でそれしかしていなかったら、今以上に実力がつくことはない理屈になります。

 実力をつけたいと思うなら、辞書を使うべきです。そこら辺の参考書よりずっと便利です。発音も意味も、時には語源も、使い方も、例文も、日本人が間違いやすいポイントも全て書いてあります。初めのうちこそ時間がかかって読みにくいと思いますが、そこで粘ることで単語の知識はもちろん、英語自体への理解も深まります。大きな飛躍のための準備です。

 ついでに小声で叫ぶなら……、単語帳はみんな紙で持っているんだから、辞書も紙のを使えばー?