「英語は得意だと思ってたんですけど……」

 ハイレベルな受験生を教え始めて数回目で、生徒さんがこのセリフをいうことがあります。これはもっと伸びるためにとても大事な瞬間で、講師としては「しめしめ……😏」と思います。前回の記事とも関連しますが、「思ったよりダメな自分」をこのように自覚できる生徒はさらに伸びる可能性が高いのです。

 記憶力が良かったり器用だったりすると、少々基礎の抜けがあろうが文法理解が不足していようが、学校の試験や模試ではかなりの成績が取れてしまいますから、自分は英語が得意だという認識に至ります。そこで、東大をはじめとした難関大に志望を定め、難しい問題でも点が伸びるように英語も一応は個人指導を受けておこうかというくらいの気持ちで授業を申し込まれます。

 個人指導では、その生徒さんの実力と、志望校合格に求められる実力の2つだけが焦点であり、その方より英語が苦手な多くの受験生は考えに入れません。したがって、毎回の授業のたびに、「ちょっと難しい」と感じることになります。そして、特に初めのうちは基礎の抜けに目を光らせ、よほどの人でない限り抜けはありますから、冒頭の自覚につながります。

 一つ上のステージへよじ登っていく際に、「今まで通り」で済まないことは10代後半にもなるとすでに様々な経験から理解している方が多いです。今できることだけをやっていれば気分は良いですが、同じレベルにとどまります。今できないことをできるようになっていく途中の道では、少々プライドが傷ついたり、焦ったりするのが当然です。ですから、「あれ? こんなはずでは……」と感じた時は、自分がもっと上へ行くチャンスを得たのだと思ってください。