東大受験生二人の明暗を分けたものは⑥

本人まかせのAくんの親御さん

 入塾初日、Aくんは一人で塾に現れました。持ってきた模試の結果や教材を広げながら、どういうところで点が予想より取れないかという分析や、困りごとを一生懸命伝えてくれました。実は単語の暗記を(意味がないと思って)ちゃんとやってきていないということや、「自分の記述解答は正しいのに減点されたりバツがついたりするのは採点がおかしいと思う!」という正直なところもたくさん話してくれました。一応Aくんの名誉のために付け加えておくと、同じ記述解答を1〜2ヶ月後に見返した時、「ええー、この解答は全然ダメじゃん。こりゃー0点だ」と納得するだけの急速な進歩を遂げました。

 スケジュール管理についても、何度も大失敗をしながらも、親御さんは基本的にはAくん本人にまかせ続けました。その結果は以前の記事の通りです。

親御さんまかせのBさん

 一方のBさんは入塾初日、親御さんと一緒に現れました。現状の説明や分析は全て親御さんがお話くださいました。それも、「文法は文法問題としてできる程度には理解しているが、長文の中で使われているときちんと読めずに時間がかかって、解き終わらずに焦ってさらにミスをして」等々、よくそこまで大学受験の内容を親御さんが把握しているものだなとこちらがびっくりするほど詳細です。さらに驚いたことには、後で実際に授業をしてみると、その詳細な分析が全て正しいのです。少しはご本人の感じていることを聞きたいと思って話を振っても、
「あの……あれは……その……だったよね、……こないだの模試……え?……あの……でも……」
 とモジモジしながら親御さんをみるばかりなのです。まるで中学受験の親子のようでした。中学受験はそれで成功したのでしょう。

受験を通して成長した者が勝つ

 Bさん親子のような中学受験型の親子は最近とても増えています。共通して、十分に志望校合格の実力はあるのに、合格まで何年もかかったり、ボーダーぎりぎりのところででもうひと踏ん張りすることができずに、第2志望校に甘んじたりしています。親御さんが子供の成長の機会を奪った結果です。

 中学(やもっと前)から私立校に行ったり、個別指導塾に通わせてもらえるような恵まれた高校生にとって、大学受験は自らの将来をリアルに考え、悩み、時に挫折に苦しみながら、自力で格闘する人生初の挑戦です。自分自身が前面に立って進んでいくことに意味があるのです。