医学部出願書類は自分で準備、添削は受けよう

 この季節になると、英語や小論文などの学科の授業以外にも、推薦や総合入試の出願書類の添削を頼まれることがよくあります。高校での活動や志望理由など、決められた書式でかなりの量を熱意が伝わるように書くために、受験生は何度も書き直します。「こういうことを書きたかったのに、この点がうまく入れられない」とか、「PRしたいことを書いたら、字をうんと小さくしても欄に入り切らない」とか、逆に「ろくに書けることがなくて……」等々、ご相談を受けた場合には、添削をしたり、よく聞き取りをして書き直しの方向性を示したりします。

 通常の学科の勉強にもますます力を入れたい時期に、時間も労力も取られて、医学部受験生は本当に大変だなと思いますが、苦心の末に、伝えたいことが全て要領よくまとまった文章が完成すると、この大変な過程は有意義なものだとわかります。自分の今までを振り返り、分析し、人に伝わる言葉にするという作業自体ももちろんですし、そのまま小論文や面接試験の強力な対策にもなっています。

「時間の無駄だから」と中には親御さんが代筆するケースもあるそうですが、ご本人のためどころか、合格への妨げにしかならないと感じます。

 私が添削する場合には、単なる文章の推敲ではなく、「ここは何故このように書いたのか?」、「こことここは矛盾するようにも読めるが、どういうことか?」、「ここは少しわかりにくいけれど、具体的にどういう体験や事実をもとに書いたのか?」というような、かなり突っ込んだ質問をすることがあります。書くことがないと言っていた生徒さんでも、今まで言葉になっていなかっただけの深い思いが出てきて、一緒に感動してしまうこともあります。文章の表面をなめらかにする作業と違い、その人自身の体験や考えを語ってもらうことで、ご本人からひとりでに書き直しのアイディアが浮かんでくることもあります。そのようにして完成した文章は、密度が高く、底力のようなものが感じられることがあります。