やりたいことが見つからない高校生へ

「やりたいか、やりたくないか」よりも、向き不向きを考える

 前回の記事でも書いた通り、高校生や、大学生になっても、将来これといってやりたいことや就きたい職業が見つからないということ自体は全く問題だとは私は思いません。小さい頃からお医者さんになりたいと思い続けてきたという人はすごいなあと思いますし、特技や好きなものがあって、それが職業に結びついている人は羨ましいなあと思います。

 でも、多くの人はそうではないでしょう。これから先、とりあえずそこそこ興味のあるものを勉強していくうちに、今は知らない面白い分野にハマることがあるかもしれません。まだ存在しない職業を作り出すかもしれません。大学を出て、とにかく就職して、見つかった好きなことは趣味として楽しんでいるかもしれません。どれも素敵なことですね。

 それでもとにかく進路をある程度決めなければならないという時に、小さい頃から大人たちにさんざん言われてきたであろう「何になりたいのか?」という問いだけを考えても、今まで同様、結論は出ないでしょう。やりたいかどうか(「やりたくない」という消去法で考えてみるのは一手ですが)という自分の希望本位ではなく、向き不向きや能力の有無を客観的に考えてみてください。

 医師になって人を助けたいという思いがなさそうなのに医学部を目指すという受験生の中には、「そもそも医師に向いていないのでは?」と感じられる人がいます。勉強が全然好きではないとか、人としゃべるのが極端に苦手という人などです。

 私は音楽が好きですが、残念ながら能力がないので、音楽大学を目指すという考えはありませんでした。運動が苦手なのに、親が体育教師になることを勧めるから体育大学を目指すとか、数学も物理もさっぱりわからないのに、就職に有利らしいから理系の学部を目指すなどは、誰にもわかるおかしな例だと思います。

 強い動機もないのに、わざわざ自分の向いていないことに取り組むことはありません。進路で悩む高校生は、自分に向いていること、自分にできることという視点も持ってみてください。