帰国生にも英語の苦労がある③

和訳で点が取れない

 「英語を英語のまま理解するように」とは日本の教室でよく言われることです。暗号解読のごとく一単語ずつ日本語に置き換えるのではなく、左から右へ英語のまま読めるようになるためには大量の「読み」の訓練が必要です。

 帰国生は現地で、細かい不明点はともかく大まかな内容をつかんで授業についていくために、この読み方を身につけている場合が多いです。模試や過去問の長文には下線部和訳の設問がよくあります。長文の内容も下線部の内容もよくわかったと思って答えを書きます。ところが、実際にはちょこちょこと赤ペンが入った結果、ほとんど点が残らないということがあります。

 理由の一つには、日本語の語彙力が不足しがちなことがあります。似て非なる意味の単語を書いてしまったり、ピッタリの訳語を短時間で思いつかなかったりします。これは単語帳を用いて、知らない英単語を覚えるだけでなく、知っている英単語の日本語訳に馴染んでいくことで少しずつ解消します。

 もう一つの理由には、設問が求めていることと帰国生が優先してきた読み方が一致しないということがあります。出題者は英文の構造を把握して文法・語法・単語の訳に至るまで正確に直訳することを求めています。試験問題慣れしている日本の高校生なら「この関係詞とこの "that" がポイントだな」などとわかると思います。しかし帰国生は内容を理解してしまうと細かなことは気にせずに和訳してしまうことが多いです。長い一文では、日本語と英語の語順が大きく異なるので、前後行ったり来たりしながら和訳を完成させなければなりませんが、左から右に一方通行で理解できた人にはこれはとても面倒で無駄な作業のように感じられます。和訳や内容説明の記述問題では、英語と日本語をつなぐことが求められるのです。