東大受験生二人の明暗を分けたものは①
実力伯仲のふたり
ある年の初冬、当時出講していた個別指導塾でよく似た状況の二人をほぼ同時に担当することになりました。二人とも、誰もが知る難関私立中高一貫校の高3生で、志望も東大理系の同じ科類です。受かるか受からないか、厳しめだけれどギリギリ望みはあるというレベルも同じ。数学や理科が得意科目なのも同じ。さて英語はというと、そこそこの点のまま伸び悩んでいるのも同じ。特に第1問の要約と第5問の長文を見てほしいという要望まで同じでした。
問題への取り組み方というのか、集中の度合いも同じでした。印象に残っている場面があります。解いてきた第1問の要約について、本文の英語が読み取れていなかった部分を解説し、要約の日本語の不十分なところを指摘したときのこと。
「じゃあ、今のを踏まえて、書き直してみて」
という私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、ノートに飛びつくようにして一心不乱に書き始めます。筆圧高めのペンの音が休みなく続きます。時々ほんの少し止まって消しゴムを使ったかと思うとまたすぐに書き書き……。数分後、パタっと止まって「できました。」
いやぁ、感心しましたね。2人目の時はデジャブかと思いました。書く前に考えをまとめる時間をとるかと思いましたが、私が話している間にもう考えているのです。中学受験時には二人とも塾の上位クラスにいたに違いないのですが、そういう教室ではこういう鉛筆の音が響いているんだろうなぁなんて思ってしまいました。