受験生迷言録③「勉強してません!」

魔法使いを求めて

 高校3年生の彼女。目指すは医学部。季節ははや冬。初回授業の開口一番、いきなりの大宣言でした。

「私、勉強のやり方がわからないので、今まで本当に、本当に、全く、勉強してませんっ!」

 いや、それが自慢になるの、成績優秀者だけですから……。高校も卒業間近になって勉強のやり方がわからないとは? 受験生が「全く勉強してない」なら、毎日何をやっているのか? しかし遊び呆けているわけでもないらしい。一人一人にとことん付き合うのが個別指導です。頭の中が「?」でいっぱいになりながらも気を取り直し、”勉強のやり方” をお教えしました。単語を毎日一定数ずつ覚える。文法の単元を学校の授業や参考書で理解したら問題を解いてみる。できなかったものを……。長文は……。説明を終わると、
「それだけですか?」
とガッカリ顔。「そ・れ・だ・け、です!」

 短期間にどの教科でも何人ものベテラン講師を取っ替え引っ替えしていた彼女が求めていた「勉強法」とは、「これさえやれば全て解けるようになる」といういわば "魔法" だったのでしょう。読んだり書いたり覚えたりを延々と繰り返すだなんてあり得ない、もっとスバラシイ勉強法(注:それを魔法と言います)があるはずだ! 私はそっちで「勉強」する!ということだったのでしょう。

 いいですよね、魔法。私も使えるようになりたいです。としまえん跡地に行ってみようかな。でも魔法学校で何年も修行するみたいだから、結局、魔法の勉強をするのか。めんどくさいな。魔法が簡単に使えるようになる魔法はないのかな。