子供がスルーした医学部プレッシャー

 親御さんや一族が医者の場合、お子さんにも医者になってほしいと望み、お子さんの側もその「圧」を感じている場合がとても多いです。その「圧」のかけ具合と、受け具合で、大学受験の様相も随分と違ってきます。いくつかのパターンに分けて見ていきましょう。

親の「圧」弱め、子供の「スルー力」強めの場合

 親御さんはお子さんにできれば医学部を目指してほしいとは思っているものの、はっきりと口に出したり行動に移したりはしない方もいます。お子さんが多くて一人一人にかかる圧が分散されているケースもあります。

 一方のお子さんが、良い意味で「鈍感」であったり、別の分野に強い興味を持っていたりする場合です。私は好奇心の弱い子供だったので、鉄道にせよ虫にせよ、小さい頃から熱中できる対象を持っている人というのは素晴らしいなあと羨ましく思います。「好きなことをやってよい」と言われても、その「好きなこと」が見つからないから困っているという人の方が多いのではないでしょうか。

 さてこの場合、時間の経過とともにたいてい親御さんの方があきらめます。そしてお子さんは、受験では興味のない必須科目に苦労しながらも、我が道を歩んでいきます。

とても印象に残っているある生徒さんは、動植物が大好きで農学、獣医、畜産あたりを目指していました。浪人生になっても息抜きに子供の頃から眺めていた恐竜図鑑などをみては楽しそうになんだか話しかけてくる、と親御さんがあきらめたような呆れたような口調でお話しになっていました。理系科目は好きで得意なのですが、嫌いで苦手な英語(と国語)を伸ばさなければ志望校には届かない。そこで、「頭に入ってこない」という文法用語は極力使わず、単語はレベル分けして基礎レベルを徹底、長文も生物系のものを中心にして……と工夫した結果、センター試験・二次試験ともに手応えがあり、熱望していた国立大学に合格しました。

 お子さんが医者になってくれるよりも、好きな分野があって我が道を進む強さを持っている方が、喜ばしいことではないでしょうか。