反面教師にしてほしい、消えていった医学部受験生たち⑤

「逃げ」で医学部を目指している

 理系の大学3、4年生や、修士課程の大学院生が「一念発起した」といって医学部を目指すことがあります。私も何人もの合格のお手伝いをしてきましたが、中には医学部を目指す動機がはっきりしない人たちもいて、結局合格せずに消えていくことがあります。「どうして今からお医者さんになりたいと思ったのですか?」というこちらのストレートな質問に対して、噛み合う返事をしない人たちです。
「うちの姉ちゃんでも医学部入れてるから」
「面接とかで不利なんで」(就職面接?)
という不思議な発言や、授業での話の様子からすると、どうやら就職活動や大学院進学のための勉強から逃げている気配が伝わってきます。

 親御さんが医師だったりごきょうだいが医学部に進学していたりして医師という職業が身近で、自分も医学部に進学すればなんとなくその先は社会的地位もありそうだし、就職活動より楽そうだ。今だって名の知れた大学に通えているんだから1年くらい勉強すれば医学部に入れるんだろう。と、こんな雰囲気なのです。

 小さい頃から医師に憧れていたり、はじめは医師の親からのプレッシャーがあったけれど勉強していくうちに自ら医師になりたいと思うようになったりと、誠実に真剣にそして必死に勉強している多くの医学部受験生の中で、特に動機のない受験生が淘汰されていくのは当たり前と言えます。

 そもそも医師は人の命を直接に預かる仕事です。特に医師という仕事につく動機がないのであれば、就職活動や大学院進学を頑張ってキャリアを積んでいく方がよほど楽で、若い貴重な時間を無駄にすることもないでしょう。