医学部浪人をやめて進学する人へ

 第一希望の学部から合格をもらえずに別の学部や学科へ進学する人は文系理系問わずいますが、医学部というのは職業訓練校の意味合いがとても大きいので、この先何十年の人生航路が変わってしまったと感じている人も中にはいるかもしれません。「夢をあきらめない」で何年も浪人することが、塾や予備校では(当然)良いことのように宣伝されますが、進路変更した生徒たちは「夢をあきらめた」ことになるのかとどうも引っかかります。

 人生って、どう転がっていくのか本当にわからないものだと思います。まだ20歳前後ならなおさらです。最近、医学部受験を6浪の末にあきらめた経験を持つアナウンサーの方と、元アナウンサーで医師国家試験に合格を果たした方が話題になりました。前者の方が医学部に合格していたら、今のアナウンサーとしてのご活躍はなかったでしょうし、後者の方が18歳で医学部を目指していたら、やはりアナウンサーとしてのキャリアはなく、医師を目指す覚悟も今とは違っていたかもしれません。

 医学部に合格しなかったことは失敗ではありません。長い目で見れば、もっと自分に適した進路で将来の充実した人生の準備をしていることになるかもしれません。

 今春、私の生徒さんにも医学部浪人を打ち切って他学部への進学を決めた方がいます。実はこの方は推薦でとても惜しいところまで行っていて、人格的にも能力的にも医学部志望動機から言っても「なぜこの人を落とす?!」とびっくりしたくらいです。でも、この方の素晴らしさを理解できない大学に行っても仕方がない。また、医者は激務ですから(改善が進むことを願います)体力面で少しだけ心配はありました。もう一年浪人するにはさまざまな面で困難があったこともあり、結局別の学部へ進むことになりました。

「医学部とは違うけれど、人を助けられる仕事でとても素敵だなと思ったから」

 というのが学部を決めた理由です。この方の明確な目標は人を助けるというより大きなものであって、医師になるという手段ではないのです。

 医学部を「あきらめて」進学する人へ。この道で良いのだという確信を持って大学生活をスタートさせてください。進学、おめでとうございます。