宿題を出す必要のない生徒さん

「勉強は自分でするもの」

 個人指導はその人その人のペースメーカーでもあるので、特に初めのうちは範囲や量に気を配りながら宿題を出します。ペースが掴めてくると「ではいつも通りに今日解説したところの演習を宿題にしましょう」となりますが、授業の終わりに難しい解説を終えた時など、はっきりと口で宿題の範囲を伝え忘れることがあります。

 さて、次の週「いつも通り」の範囲を、「出されなかったから」とやってこない生徒さんと、「きっとここだから」と当然のようにやってくる生徒さんとふたつに別れます。後者の能動的な生徒さんの中には、そのうちにお互いわざわざ言わないのが当たり前のようになる人もいます。そして次回の授業が始まるや、「このパターンが苦手だったのでもう一度解説してください」と言ってくれます。もっと積極的だと「時間があったので昔の復習もしたら、どうも受動態が弱いみたいなので演習問題をもっとください」と頼まれ、追加で問題集のコピーをお渡しすることもあります。

 こういう受験生の鏡のような生徒さんたちは、勉強は「人に言われてやるもの」ではなく、「目標の大学に入るために自分がするもの」だと認識しているのです。だから講師の出す宿題を目安にしながらも、自分でどんどん勉強を進めます。質問も積極的にしてくれるので、こちらも頭の中が見えやすく、さらに効果的な解説や演習につなげることができます。

 何事であれ、「人に言われてやっているうちは進歩しない」というのはよく知られた真理だと思います。今は中学受験をする人も増え、小さい頃から親や塾に「勉強しなさい」と言われ、宿題も準備されたものをこなすのが当たり前になりやすいのかもしれません。しかしいつまでもそれでは弊害が大きいです。全てお膳立てをして勉強を「させる」状態を脱するのは、早ければ早いほど良いです。