本試験会場での模試で大失敗したのが成功の元〜ある浪人生の大冒険

地方出身者を惑わす首都圏交通網

 私大医学部の後期入試も残りわずかとなりました。前期の繰上げ待ちや後期の二次試験準備の人もいることでしょう。今回の入試は以前の記事(私大医学部試験会場の変更)でも触れた通り、TOCに変わってパシフィコ横浜やその他を会場とした大学が目立ちました。首都圏在住者にとっては「ちょっと気をつけなきゃ」という程度の変更ですが、近県から上京してホテルを拠点にいくつもの医大を受ける人や、東京の寮で浪人生活を送っている受験生には不安が大きかったことと思います。

 ある浪人生は、寮と塾との徒歩数分の往復しかしておらず、時々東京の地下鉄に乗れば、池袋に行きたいのに北千住に着いてしまうという有り様。ある予備校の模試を実際の試験会場であるパシフィコ横浜で受けることにしました。あらかじめGoogleで行き方を調べ、迷うことも想定して開始2時間前には着くように寮を出たのですが……。

 最寄りのJRの駅から東京駅に着いたところまではよかったのです。検索によれば次は「上野・東京ライン」というのに乗るらしい。巨大な東京駅構内を彷徨いながら「上野・東京ライン」を探したけれど見つからない。(まず「東海道線」を探して欲しかった。)結局「上野・東京ライン」というのはJRではないのだなと結論し(確かにわかりにくい)、なんとJRの改札を出てしまいます。それでもやはり「上野・東京ライン」という電車が見つからないので(そりゃそうだ)、途中で品川駅を通るはずだということを思い出し、もう一度 JRに戻って、唯一知っている山手線で品川に行きます。(ちょっと近づいた!) しかし品川でまたJRを出てしまいます。だって「上野・東京ライン」はJRとは別の路線だと思ってますから。「横浜」の文字をたよりに乗ったのが京急線。運の悪いことに各駅停車です。えっちらおっちら横浜駅に到着した後は、順調にみなとみらい線でみなとみらい駅に着き、すでに模試が始まって相当経っていましたが、案内のおじさんに教えてもらって会場まで走ったそうです。

 さて帰りは無事に帰れたのかというと、ご本人曰く、「横浜から乗り換えなしでずーっと乗ってたら、ただの新宿じゃないとこに着いた。西新宿みたいな名前の駅に着いたからとりあえず降りた」のだそうです。どうやら東急東横線に乗って渋谷から地下鉄に乗り入れ、新宿三丁目で降りたようです。上京後、新宿には一度見物に行ったことがあるそうで、そこから地下鉄でなんとか帰寮。ちなみに寮は新宿より東京駅に着いた方がずっと楽な場所にあります。

 いやー、大冒険でした。模試そのものよりも、本試験会場にどうやって行ってどうやって帰ってきたのかが本人も私も気になって、上記ルートの割り出しと対策に授業時間を使いました。はっきり言って英語の勉強どころではありません。何せ試験会場につけなかったら大変ですから。紙の路線図を出し、ホワイトボードに南関東の略図を書き、首都圏交通網の解説。ご本人が使っていたものよりも分かりやすい乗換案内サイトを紹介しました。それでもわからなかったら、検索ではなく「人にきけ!」ということも念押ししておきました。

 大失敗の甲斐あってか、パシフィコ横浜で行われた数回の本番には遅刻せず、最短時間で到着し、落ち着いて試験が受けられたようです。そして結果は、合格!(おめでとう!)

 地元を離れて試験を受ける人にはこのような不利があります。一生懸命勉強して実力をつけるのはもちろん大切ですが、その実力を発揮できるように下準備しておくこともそれに劣らず大切ですね。