赤本を解きまくる? それ、違うかも。

 直前期や入試期間というのはかなり長く、その間、正しい努力を続けるべきだと前々回前回の記事で書きました。では、何が正しい努力なのでしょうか。

 すでに試験が始まっている私大医学部受験生はもちろん、他学部や国立大の受験生もこの時期は過去問に取り組んでいる人が多いと思います。どんなペースで取り組んでいますか? 

 塾の中には、この時期に赤本を1日で全教科1年分を毎日解かせるという方針のところもあるようですが、それはほとんどの受験生にとっては大変なだけで効果の薄いやり方だと私は思います。

 過去問をただ解いたからといって実力がつくものではありません。模試を受けただけでその日の夜に朝より実力がついているわけではないのと同じことです。今まで積み上げてきた勉強によってついている現時点の実力を、最大限に発揮する方法をつかむために過去問を解くのです。そして丁寧な復習によって実力がさらにアップするのです。

 時間配分の調整をしたり、解く順番を自分でやりやすいように変えてみたり、粘って解くべき設問か捨て問かの判断力を磨いたり、記述解答の書き方を模範解答を参考に修正したりするのです。マラソンなら実際のコースを走ってみる、楽器演奏や演劇なら本番の舞台で衣装をつけてのリハーサルにあたります。

 そのようにして何年分か解いてみると、潰したはずの文法の苦手分野が残っていることに気がついたり、覚えたはずの単語を覚えていなかったことが明らかになったりすることがあります。その時は普段使っている教材に戻って確認したり、演習しなおしたりするのです。マラソン……はよくわからないのですが、楽器演奏なら、上手く弾けない部分を取り上げての地道な練習です。それによってさらに実力がつくのです。

 こういうことをきちんとやっていく前提で考えれば、1日全教科1年分を毎日解くというやり方がいかに無謀なことかがわかると思います。過去問を解くのは疲れますし、答え合わせをすればまずはその点数や得点率に目がいってしまいます。赤本ばかり解いていればいかにも受験生らしい勉強をしているという自己満足も味わえるでしょう。

 満足は、合格発表で味わいましょう。そのために過去問は復習とセットで丁寧に使いましょう。