書き直して完成させるということ〜小論文編

 前回は現代文の記述解答を書き直して完成させることについてお話しましたが、現代文の比ではないくらい大変なのが小論文です。「書き直し」どころか、そもそもの初めに何をどう書いてよいかわからず、ついつい模範解答例を見ては、内容も文章も素晴らしすぎて参考にならずに後悔し……という経験がある人もいるでしょう。(私です。😆)

 小論文こそ、とにかく書いてみた後には添削を受けるのが効果的だと思いますが、添削をする立場から見ていると、やはりその「後」の行動によって大きな差がついていくのがはっきりと感じられます。慶応の文系学部(特に法学部の論述試験は骨太です)や、医学部の様々なタイプの小論文の指導をしてきましたが、スタート時のレベルや文章を書くことの得意不得意はあまり関係なく、授業後に書き直しを完成させるかどうかでどんどん違いが出てきます。

 一回の書き直しでうまくいくこともあれば、書き直し前とほとんど変わらないものになってしまうこともあります。また、いざ書き直しをしようとしたら、解説されて「わかった」つもりだったことがやっぱりわからないから、もう一度解説してほしいと言われることもあります。これらの場合は、何度かかってでもとにかく完成させることができ、また次のお題に進むことができます。

 一方で、時間がなかったなどの理由で、書き直しを「できませんでした」と言う生徒さんは、また次の週もその次の週も同じセリフを繰り返しているうちにうやむやになってしまったり、「別のを書いてきました」と言ったりする傾向があります。もう一度解説が必要なのだろうと思うと、それは「大丈夫です」とおっしゃる。つまり、まとまったものを書き直すというめんどくさい作業から逃げているわけです。

 何度も書き直しをしてようやく完成したものを、一番初めに書いたものと比べると、内容の充実度も説得力も格段に上がっていて、わずか数回で自分にはこれだけのものが書けるようになるのかと、自信になります。苦手の小論文に向き合い続け、2月に試験の直前になって、ようやく「書き方がわかった!」と言って、慶応の複数の学部に合格した生徒さんもいらっしゃいます。面倒臭い科目だからこそ、努力は報われるものですね!