子供がつぶれた医学部プレッシャー③

親が子に精神安定剤を与える?

 浪人生活が長引いてくると、こうした生徒さんたちは心身に不調をきたしてくることがあります。すると医師である親御さんが精神安定剤などのような薬を与える例も多々あります。もちろん心配して、楽にさせてあげたくて処方するのです。ただ、客観的に見れば、それは薬を飲ませてまで頑張らせていることになります。以前の記事で書いた、受験生のお子さんにお父様が淹れてあげたコーヒーや、お母様が毎日ひたすら剥いてあげたリンゴは、本質的に異なるものだと思います。

 「病んだ」子供のために親が本当にするべきことは、子供をそこまで追いつめた原因を反省し取り除くことではないでしょうか。子供の心身の健康と幸せを犠牲にしてまで守るほど大切なものがあるのでしょうか。

 数多くの苦しんでいる生徒さんたちを見てきました。出講先などで科目担当講師の一人にすぎない立場ではできることも小さく、救えずに消えていった方もいます。そういう自分の非力に対する忸怩たる思いと共に、時にその子たちの親御さんに対して怒りさえ覚えます。