桐原現代文と開票速報

現代文と幅広い知識の関係

 昨日一昨日の続きです。英語長文以上に知識、特に時事的な知識がダイレクトに読解に影響するのは国語の現代文でしょう。入試問題の中核をなす評論や論説文というのは、たいてい現代社会のあり方に対する批判的な視点から書かれているからです。

 桐原書店の『上級現代文』の中のどれかだったと思うのですが、「現代資本主義の行き詰まり」について論じた文の中で、「選挙結果は投票終了時に実際には出ているのに、結果が判明するまで選挙戦が続いているような "錯覚" をして人々は開票速報を見る」というような部分があります。この問題を解いた東大志望の高校生の記述解答が、なんだか少し変。

 よくよく聞いてみると、その生徒さんは選挙日の夜のテレビやインターネットでの選挙特番(開票速報)を、その存在も知らないとのこと。そもそも開票に時間がかかり、激戦区であれば当確が出るのが遅く、番組開始時にすぐ当確の出る楽勝候補もいるという実感がない状態で、本文を読み解答していたのです。お家では新聞をとっておらず、テレビもほとんど見ないそうで、ご本人はまだ選挙権もない年齢でしたから仕方がないのですが、文章を書いている側は、読者が当然開票速報を知っているという前提で、むしろわかりやすくするために説明に使っているということは知っておいてほしいと思います。

 現代の世の中で起こっている様々なことや、それについての様々な考え方を全く知ろうとせずに、それらについて書かれた現代文の点だけ上げたいというのは無理な話です。今は新聞やテレビを見る習慣のないお家が増えていて、情報は溢れかえっているのに以前より情報に触れることが難しくなっていると感じます。意識してテレビニュースをつけたり、インターネットでもいいので調べてみたり、ちょっとした疑問を、勉強と関係ないからと遠慮せずに、講師にきいてみたりしてほしいと思います。