ある医学部3浪生の話③〜継続は力なり〜

 初めての一人暮らしで歯学部に通いながら受験勉強をするのは、時間の使い方や体力の面で相当に厳しいはずですが、いざ授業がスタートしてみると、この生徒さんは時間割を崩すことなくどの教科もきちんと宿題をこなし、それは大学の試験期間中でも変わりませんでした。

 英語はまず単語帳の使い方を私に言われた通りに改めました。それでも文字だけで記憶しようとする今までのクセが抜けず苦労していましたが、こちらも「声を出して音で覚えるように、音と文字をつなげるように」と粘り強く指導するので、数ヶ月後からは徐々に改善していきました。まさに「継続は力なり」を体現するものでした。よく「今週はできませんでした」とアッケラカンと言う生徒さんがいますが、爪の垢を煎じて飲ませたいものです。

 ところで、この生徒さんには年上のごきょうだいがいました。要領の良い方のようで、「チャランポランで遊んでばかりだった」のにスルッと医学部に合格したのだそうです。自分の方がずっと真面目に勉強して学校の成績もよかったのに、何故その自分がこんなに苦労するのだと納得のいかない思いが強かったそうです。

 英語をはじめ語学において、真面目に継続できる力は絶対に必要なものですが、何事にも落とし穴があるもので、この生徒さんの進歩をはばんでいたのもいわゆる「真面目さ」だったのです。そのお話は次回に。