「己を知る」ことで弱点を強みに変える

 私大医学部の推薦対策で英文英語要約に取り組んだ生徒さんのお話です。授業回数は2回だけでしたので、2〜3本かければ良いかなと想定して授業に臨んだら、驚きました。すでに書きためた要約が出るわ、出るわ。学校の先生にも手伝ってもらって他の大学の長文も材料として使い、すでに書いて添削を受けたもの、添削待ちのもの、これから解くもの……。

 当の生徒さんは、私の賞賛など顔つきも変えずに受け流し、「いえ、心配性なのでたくさん準備しないと不安で。これから本番までにまだまだ書きます」とおっしゃる。書く意思はあってもそうそう書けるものではなかろうと思うのですが、「自分は量はこなせる。とにかく書くことはできる」ということに、学校で英検対策をしたときに気づいたのだそうです。

 英検になかなか受からず苦労したそうで、ようやく合格して次の級を目指すときに、「また落ちるんじゃないかと不安で不安で」特にエッセイの練習をたくさんしたのだそうです。そうしたら質はともかくたくさん書けるという自分の能力についての発見があり、それならばとひたすら演習をしたところ、上の級には1発合格という結果につながりました。

 心配性だということ自体はマイナスのものかもしれませんし、質より量を優先する勉強は効率が悪い面もあります。しかし、マイナスを自覚した上で、それを生かした勉強に熱心に取り組んだことで、確実に英語力は上がり、誰よりも多く書いたという自信を持って試験に臨むことができるのです。己の弱点から逃げない人は成長するのだなと感じます。